サヨナラの詰め合わせ/こたきひろし
男の方から別れを言い出したから
最後に焼き肉奢ってと女は言った
五年ぐらい付き合ったから
お互い噛み飽きたチュウインガムみたいに
なってたのかもしれない
会うたびに話してるのは
女の方ばかりになっていた
男はほとんど会話がなくて
それでもお互い惰性で繋がっていた
お互い欲求が溜まると
お互いがお互いの身体を
欲求の吐け口にはしていた
そんなときだけは
愛してるとか
何度も口にしたけど
なのにどうして
その夜は男の方からよく喋ったんだろう
女は終始無口で
肉を焼き食べていたのに
そして
男は泣き出したのだ
声を出して
女は吃驚し
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