幸福という味覚/水知鴇都
 
覚えてもいない幸福の味を求めて彷徨う


目は潰れ耳は千切れ鼻は失くし
皮膚は擦り切れただれ口は開かない


それでも存在を知ってしまっているから
何処にも無いなんて信じられなくて

すすり泣くほど焦がれては
のたうち回り悶絶する


あれはきっと綿の飴
あれはきっと氷菓子

腹に届く前には消え失せる


舌のように限られた者だけが
独占し隠し持っているのだ
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