地底湖/春日線香
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住み着いた蛙を潰してしまわないよう、ドアを開けるのも慎重になる。思わぬところにいるのでぎょっと驚くこともある。そんなものは早く殺せと言われても、どうしたらいいのかもうわからない。肩が急に重くなったりして、まるで悪霊のようだなと思いつつそれが逆に面白い。
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小麦粉まみれの腕が夜毎にやってきて窓にべたべた手形を押して帰っていく。それはいつからのことだったか。大きな黒犬に追いかけられたあとか。彼岸花をぼきぼき折った時か。とにかく窓ガラスが真っ白に曇って大変迷惑している。雨が降ると
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