樹木の声〇森の思考(改訂)/ひだかたけし
 
[やあ]
[なんだ?]

森はもう
こんなに涼やかに
静まり返っていたのか

[なあ]
[なんだ?]

此処に来ると、
君たち樹木の我慢強い無言の意識を感じるんだよ
僕の脳裡にはね、
ここいらを駆け回っていた
子供たちの声が響いて
時折どうしようもなく切なくなるけれど
君のように此処を住家に生きられたら
なんて思ったりもするのさ

ほら、
梢の先の青い天蓋に
僕の思考が全く独立に
漂い出すのが見えるかい?

[ふん!つまらん]
[どうしたんだい?]

そんだけ抱えた欲望やら哀しみが、あんた
ちょいと鬱陶しくなっただけだろ
忍耐も欲望も物もこ
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