夜中に目を覚まして/こたきひろし
 
「ロープ買って来るよ。お前の家の庭の木にでも引っ掻けてぶら下がってやるよ」
言ってやった


すべてに納得いかなかったが
親族企業の決断は覆らなかった

私は解雇された
自分からそうしてくれと申し入れた
会社は渋々受け入れた

私は失業し無職になった
退職金と失業保険ではいづれ行き詰まるが
そうしている以外方法は見つからなかった

ハローワークに六十歳以降の募集案件はないに等しかった
あっても極僅かで、低い時給で短時間だった

相談員もそれを見切っていたから
積極的にも親身にもなってはくれなかった

私はすっか気力を失ってしまい
無為な日々を浪費してしまうばかりだった

欠けているのものが
人より過分にあったから
会社は定年で私をクビにしたんだろう

そんな思いがたえず私を苦しめた
そんな自分に再就職口が有るとは
考えられなくなっていた

不眠の夜が続いてしまった
のはそのせいだ
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