冬を知らずに/
丘白月
赤とんぼが
たぶん今年最後の
赤い色も褪せて
落ち葉のように
ふわりと
降りてくる
もう空に戻れない
自分がどこから
やって来たのかも
忘れているだろう
空で生まれたと
思っているだろうか
無数の舞い散る
落ち葉を母だと思って
追いかける
私が見守るなかで
赤とんぼは
落ち葉になる
風が落ち葉を集めて
空に届ける
もう一度
舞う夢を見るだろうか
季節一つの命の中で
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