ほほえみ/梓ゆい
 
ころん・ころん。と揺れる小さな頭

母の背中でねんねを始めた頃合で
父はそっと孫を抱き上げ
つつーっ。とタレ堕ちそうな顎周りの涎を
愛用の手拭いでさっと拭き取る。

すーっ。すーっ。と寝息が聞こえる
三月上旬の寒空の下

少し色あせた半纏で
孫の身体を包み
小石だらけのあぜ道を歩く二人の影は
何かを語らう代わりに重なりあっていた。
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