ブラームスへ/日比津 開
もうかなり昔のこと
僕はあなたの住んでいた部屋
お墓を訪ねたことがある
そのとき、あなたのお墓の前で
僕はこう祈った
『クラシック音楽、あなたに関わるこの仕事を
僕の一生の仕事、天職とさせて下さい』と
しかし、予期せぬことが起こり
その願いが叶わなくなったとき
僕は人生を諦め、人付き合いを絶ち
音楽を聴くのを一切止めた
そのあと、僕は社会の外にいて
いつか路傍に死す
自分の姿しか想像できず
生きている屍同然の毎日を
送るようになった
しかし、それから数年後のあるとき
ラジオを聞いていると
あなたの作品、交響曲第4番が
流れだした
聴くつも
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