楕円/こたきひろし
そこは始発駅
そこは終着の駅も兼ねている
冬の夜はまだ明けていなかった
寒気が顔の皮膚を
まるで
剃刀みたいに切り裂いてくる
旧年が去って
新年を向かえていた
時刻は午前四時半を回っていた
巨大な駅の構内は
まだその眼を開いていなかった
私は十九歳
未成年だった
故郷に一刻も早く帰りたくて
その日一番早い電車に乗ることにした
その為にタクシー代を惜しまなかった
私と同じく
駅が眼を覚ますのを待って集まる人達がいた
皆
凍えてしまいそうな寒さの中で
白い息を吐いていた
その時構内の一角で怒号があがった
静寂は一気に切
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