巡礼/こたきひろし
私は一千九百五十五年の生まれです
歴史の示す通り
十年前の四十五年に世界大戦が終結していますね
この国は
ポツダム宣言を受諾して
敗戦を向かえました
学校で教わったよね
もし
一億総玉砕なんかされてたら
私はこれを書けてません
父親は戦争に招集されて
無事に生還しました
戦死してたら
私はこれを書けてません
しかし
父親の弟は
南方の島で死にました
兄と弟の運命は
二つに分かれました
私はその運命の分かれ目から
運良く零れ落ちたしだいです
そうでなかったら
私はこれを書けてません
子供の頃
私が生まれて育っ
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