真似事――文字をほどいて火を点ける/ただのみきや
秋の雨引き戸を開き覗く夢
翻る少女の声も遠く去り
秋よりも秋を装う女たち
水槽に涙をためた金魚姫
翼切り歌を失くして人になる
手折るなら痛みの一つ分かちたい
老いらくの恋を抱えて終わりまで
真綿舞い枯れ菊ふたつ埋まるまで
旅人をもてなす準備かナナカマド
母通る前と後ろにこども乗せ
気の早い雪虫むねに降りきて
虫籠に夏の形見の蝶の翅
カマドウマ鳴けても好いてはもらえない
宙に浮きサイドミラーを覗く虻
干上がった道の真中でミミズ吠え
便箋の文字がゆらめき
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