巡り会えない誰とも/こたきひろし
ものですから。大分遅れてはしまいましたけど」
「はい?」
私は思わず怪訝な顔で相手を見てしまった。
そこに立っていたのは中年ながら妙に色艶のある女の人だった。
「最近変な電話が掛かってくるんですよ」
突然女の人が言い出した。
「はい?」
私はふたたび怪訝な顔で相手を見てしまった。
それから聞いた。「どんな電話ですか?」
「若い男の声だと思うんだけど名前も要件も言わないんですよ。ただ、ハアハアと息があらいんですよね」
「いたずら電話ですか?」と私は言った。
「そうです。よくあるイヤらしい電話です」
と女の人は言いながら意味深な目で私の方を窺ってくる。
「それが私とどんな関係
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