後から悔やむから後悔って言ううんだ/こたきひろし
 
れなかったんだ
俺ばかりじゃない
俺の家族もさ
親類縁者も頻繁に顔を出してくれてさ
今か今かと待っていた訳さ
その時を待っていたんだよ

医者はとっくにスプーン投げてた患者だったんだから
周囲は誰も内心では
奇跡的な復活なんて期待してなかったし
望んじゃいなかっただろうな

いい加減さっさと決まりつけてくれよ
って思っていたんじゃないかな
だけどどっこい
本人必死に生きようとして
往生際すこぶる悪いのさ

そしてあげくの果てに
家族みんなあきらめて病院から帰宅してしまった夜
その深夜未明に静かに人知れず
息を引き取った
引き取ってしまったんだ

親の死に目に立ち会うのって
難しいって
わかって貰えたかな


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