総天然色とはいかない世界で/こたきひろし
 
なるかも知れない

この世界で視力を失い
ひたすら音と触覚に頼らざる得ない人たちにとって
色彩は暗闇の向こうの遥かなる想像の世界
なんだろう

しかし
けれどそれは
健常の眼より
美しく華麗に
配色されているのかもしれない

恵まれて光を失わないでいる
自分にとっては
どこまでも
身勝手な想像でしかないのだけれど

しかし
未来は全てかわっているかも解らない

過度な文明の進歩が
人間の個性を完全に奪い

まるで大量に生産される
機械と同じになってしまうかもしれないのだ

そうなってしまったら
蒼く晴れ渡る空にも
血の色に染まる夕焼けにも
何の感慨もわかない

キカイの視力になってしまうかも
わからない
のだよ

そうなったら
世界中の人間の
肌の色も
髪の毛の色も
目の色も
公平に統一されて

言語はひとつだけになり
偏見や差別は皆無になって
理想社会が築かれてしまうかもしれないのだ

人間の心なんか
無色透明になって








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