散歩道/ああああ
 
Aと行ったボーリング場のガタゴトした騒音を思い出していた。AがCに告白したとき、Aは手が震えていた。最初はこのましく思えたAの純朴さは次第にうとましくなっていった。AはCが何を言ってもニコニコ笑ってうなずくだけなのだ。Aは毎日欠かさずラインで連絡してくるが、筆不精なBは返信を考えるのも一苦労だった。Aは自分自身に物事をきちんとけじめづけることを課しているようなところがあったので、Aにはっきりと別れを告げるべきだと考えた。Cが電話でAにそのことを相談するとAは電話口で泣き出してしまった。Cが「また泣いてるの?」と聞くとAは「泣いてないよ」と言った。Cはそれに「ふうん」とだけ答えた。Aはわかった、じゃあもう切ろうか、と言った。Cは「はい。別れてください」と言った。Aはもう一度わかったといった。Cもつられて少し泣いてしまい、Cのコートのポケットの中では、昼に職場の上司からもらったはっかの味のキャンディーが暖房の熱でゆっくりと溶け出していた。Cが「大丈夫? 自殺とかしない?」とAに聞くとAは大丈夫と自信を持って答えた。
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