不在/蜜
誰も居ない部屋へ帰る
玄関の消し忘れた電気に
君の存在を期待してしまう
小さいスーパーの買い物袋を
よいしょ、という感じで
大きすぎるテーブルに置く
一息ついたその時
「わたしはいないよ」
と、確かに君の声が聞こえてきて
寝室へ
窓を開けベランダ
重い扉を開けクローゼット
布団を持ち上げ大きなベッドの中
どこを探しても
君は居なくて
キッチンへ戻ろうとする時
「わたしはいないよ」
再び、確かに君の声が聞こえてきて
キッチンへ
体を屈めてテーブルの下
君の好きなお菓子の冷えた冷蔵庫
もう二年ほど触らなくなっていた排水口
どこを探しても
君は居なくて
あぁだから「いない」って言ってるんだね
居ないんだから見つかりっこないよね
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