希望と絶望/こたきひろし
一戸建てを買ったのは結婚して五年ぐらい経ってからだった。
独身のままで一生終わったらアパート暮らしで生涯を閉じたに違いなかった。
住宅購入を決断して取り合えず実家の父親に電話で報告したら、いきなり怒りだして電話を切られてしまった。
無条件に喜んで貰えると思ったのに吃驚した。
納得いかなくて直ぐにかけ直すと母親が出て父親に繋いでくれた。
「この年寄りに家の借金の手伝いでもしろと言うことか?」
と聞かれた。
実家にそんな余裕ないのは承知していたから、そんなつもりは毛頭なかった。
嫁さんの親が頭金を出してくれるからと言ったら、急に大人しくなった。「そうか、そんならいいが、父ちゃんは手
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)