真似事――落下する意識/ただのみきや
子を叱る母の帽子に赤とんぼ
バスを待つ頬の産毛に光差し
空軽く眼(まなこ)を纏(まつ)る金の糸
借りた本から押し葉の栞おちて
蔦燃える窓に映るは誰の影
液晶に飽きて見上げるうろこ雲
楢の実をしだきて影の長さ知る
雲さしてカナヘビ追えば靴の上
毬栗(いがぐり)に触れてはじける子の仕草
値は手頃サヨリの如きサンマかな
蜘蛛の子を頭に乗せて帰宅する
サンダルが行き場を失くし引きこもる
きのこ刈りベニテングとはいざ知らず
きのこ食い見るものすべて輝いて
ただ一人確信犯はわた
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