心が汚れるって/こたきひろし
 
汚いし」
女は何の躊躇いも見せず平気で口にした
その言葉と態度に俺はズタズタに切り裂かれたが何も言い返せなかった
臆病で意気地無しだった
百戦錬磨の女はそれを見透かしたに違いなかった
その夜の事がずっと忘れられなかった

昨夜はほとんど寝ていなかった
寝ないでしてばかりいた

何にでも初めてがあった
男と女が初めて体を合わせようとしたとき
うまく繋がれなかった

男は焦る
女は協力を惜しまなかった
回を重ねる内に上手くいくようになった

男が女をアパートに誘い込んだのはホテル代が勿体ないと感じてしまったからだ
それは随分と汚れた心が引き起こす振る舞いに違いなかった

一旦汚れ出した心は
もはやもとには戻らないだろう
ますます汚れていって
余程の勇気と決断がなければ
洗い流せはしないだろう

戻る   Point(2)