未遂を繰り返す/こたきひろし
 
見えないもの

聞こえないもの

触れないもの

存在しない筈のないものが
眼を閉じると
姿をあらわしてくる

荒れ野は果てしなく
正体不明の光の輪が
暗闇の樹木の周囲を飛び回る

幻の布には
染みのように浮かびあがる
地図

足元の靴は
得たいの知れない泥にうまる

荒野は方角を持たない

繰り返し繰り返した
自死は
その度に
未遂のままに

老化した少年は
未だに
荒れ野をさ迷う

羊と何も変わらない

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