ぶどうのつかいかた/la_feminite_nue(死に巫女)
やわらかな嘘につつまれていても、
ええ。きっと、それがいいと想う。
ひとふさのぶどうは湿り気をもって、
描かれることを待っているように。
ひとふさのぶどうはあたたかな冷たさで、
ええ。……いいえ。
彼女が口びるをすぼめてなにかを
ささやこうとしたときに、
ただ、その数秒のためらいのなかに、
すべてを見ていたの。
しっとりとして人らしくって、
ぶどうの実は、まあるい粒よ?
しっとりとして、葡萄らしくって。
彼女は、あたたかな冷たさで。
しろい指先。ふれて落ちる水滴。
そのために……光のなかに待っていて、
目を伏せることはなかった。
なにも迷いなく、迷って。いいえ?
彼女はきっとぶどうのつかいかたを知ってる。
──なぜって、……秋だし。
戻る 編 削 Point(2)