まねごと――門口に終わりの予感/ただのみきや
黄の蝶と白の蝶とが連れ立って渡る線路に光倒れて
風も無く半旗を垂れたわが心空は高くてなにも見えない
あてどなくふるえて迷う小さな蛾人に纏わりなにを思うか
説明も言い訳ももはや億劫だ保つより失う気楽さ
情報の網に絡まり動けない端末手にして人が末端
風に乗ってはまた降りて鴎は誘う戯れの白い手つき
辻褄の合わぬ話もなんのその景色を描く心ひとつで
野の花の震える様を見る女瞳の奥には吹雪が舞う
薔薇は萎れ紫陽花は染まる黄昏の幸せを誰が量るか
螽斯(キリギリス)は蟻を頼らない手ぐすね引いて待っているのは蟻だ
老いが成熟を覆うころ静謐の小箱よ真中に一つあれ
《まねごと・門口に終わりの予感:2019年9月22日》
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