転生/こたきひろし
産まれてから死ぬまでの
間をいっしょうと言うらしい
死んでからふたたび産まれるまでの間を
何と呼べばいいだろう
棺のなかで花に埋もれながら
蓋に釘を打たれた日
そこから始まる舟の旅
人がそのいっしょうの間に
流した涙の量なんてたかが知れているだろう
最期にこぼした涙のしずくが
舟の底に垂れている
いっときの舟の旅の間に
涙はかわくだろう
舟のいく先は
何も約束されてはいない
ふたたび舟がこの世界の岸辺に
戻ったとき
私は鳥類になっているかもしれない
深海の魚になっているかもしれない
蛇か蜥蜴
蝶か蜻蛉
ゴキブリになっているかもしれないのだ
人間にふたたび
生まれたとしても
奴隷にされて鞭を打たれて
いっしょうを終わるかもしれないだろう
けして甘い期待をしては
いけません
戻る 編 削 Point(2)