転生/こたきひろし
 
産まれてから死ぬまでの
間をいっしょうと言うらしい

死んでからふたたび産まれるまでの間を
何と呼べばいいだろう

棺のなかで花に埋もれながら
蓋に釘を打たれた日
そこから始まる舟の旅

人がそのいっしょうの間に
流した涙の量なんてたかが知れているだろう

最期にこぼした涙のしずくが
舟の底に垂れている

いっときの舟の旅の間に
涙はかわくだろう

舟のいく先は
何も約束されてはいない

ふたたび舟がこの世界の岸辺に
戻ったとき

私は鳥類になっているかもしれない
深海の魚になっているかもしれない
蛇か蜥蜴
蝶か蜻蛉
ゴキブリになっているかもしれないのだ

人間にふたたび
生まれたとしても
奴隷にされて鞭を打たれて
いっしょうを終わるかもしれないだろう

けして甘い期待をしては
いけません




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