だんらん/梓ゆい
生後半年になる甥っ子のそばには
何かに埋もれてしまいそうな影が
リビングの明かりに照らされて一つ。
久方ぶりに家族が集まる頃
元気な声を上げて布団を叩きながら
ぱたぱた。と
手足を動かし始めた甥っ子は
誰もいない方角の天井を向きつつも
笑い続けて落ち着かぬまま。
母とふたりの妹が
不安な顔を見つめあう瞬間
私の鼻先に香る微かな線香の匂い。
「ああ。今日はお盆の中日だ。」
大玉の西瓜と胡瓜と茄子の精霊馬
二つ並んだ父の遺影と位牌を振り返る
短い夏休みの一ページ。
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