無題/梓ゆい
 
父の顔を知らないはずの甥っ子が
写真を眺めては「じーじ。」と言った。

いつもなでなでをしてもらったよ。と
幼くともはっきりとした言葉で。

懸命に訴えかける眼差しと
更に笑ったような父の遺影。

確かにあり続けるものは
消えずに残されたままの
一握りの記憶。

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