僕の誕生日/梓ゆい
脳梗塞で麻痺をした身体を起して
杖をしっかりと握りつつ
弱った足腰で孫を出迎える父。
「よしくん。よしくん。」と急ぎ足になれば
転んで怪我をしないように。と
周りの皆が心配をする。
ようやく座った首を向けて
にこぉーっと笑い
顔に向かって伸びる小さな手を握っては
いつもと同じ様に頭を撫でる。
目を閉じると重なり合う
娘たちの生まれた日。
今日は72回目の誕生日
孫が生まれた今
言葉には出来なかった喜びを
再び噛み締めるのだ。
孤独と隣合わせの子供時代を経て
確かに築き上げた幸せな日々を。
戻る 編 削 Point(1)