アンネ・フランクの家/丘白月
 
アムステルダムの妖精の想い出
第1話「アンネ・フランクの家」


生きていればまだ80歳の
お友達の話を聞いて欲しい

初めて逢ったのは
誕生日だった
だってプレゼントを手にして
とても喜んでいたから

リボンをほどくと
赤い表紙の日記帳

ロウソクの灯りの中で
あの子は私を見つけて
ずっと一緒にいてねと言った

私は守れなかった
けれど最後の日
ありがとうと言ってくれた
ごめんねと言うしかなかった

今も残るこの部屋で私は待つ
やがて生まれ変わって来る日を
カーテンを開けて
窓を開けて
入ることのなかった
日差しをたくさん入れて

この263番地のプレートが
錆びないように
いつまでも



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