再起/安部行人
まだ時間はある、
燃え尽きるまでには。
おれは長いあいだ炎ではなかった、
静かに灰になっていこうとしていた。
おれは夜に黒く燃える太陽を見た、
重力の暗さを持ったフレアがのたうっていた。
おれは地下から吹き上がる風のなかにいた、
夜に亀裂を走らせて歌が聴こえていた。
おれは言葉を浪費していた、
だがもう灰になる言葉もなかった。
おれは見ていた、
最後の人間が橋を渡ってゆくのを。
おれは再び炎を感じた、
血のかわりに指先から火が滴った。
おれは再び灰から言葉をつくりだした、
燃える火で焼きつけるために。
まだ時間はある、
燃え尽きるまでには。
戻る 編 削 Point(2)