エッフェル塔の妖精/丘白月
 
パリの妖精
第17話「エッフェル塔の妖精」


馬の駆ける音に夏草の匂い
練兵場の士官は花を愛し
マルスの公園は妖精を愛す

月夜にエッフェルは
野に背をあずけ
設計図を握り
ため息ひとつ

妖精はそれでいいよと言う
美しい塔だねと言う

だけどとひとつお願いする
ここの花はそのままにと

その晩エッフェルは
図面に花壇を書き足す

美しい公園に建つ塔の名は
エッフェルと名付けられた
偶然かもしれないけれど
妖精の名もエッフェルだった

完成したエッフェル塔
初めてのエレベーターに
エッフェルが仲良く乗った

約束通りの公園にしたよ
チューリップが並んでいた
ありがとうと言い合った


戻る   Point(0)