まねごと――喪失目録/ただのみきや
白い貝殻なにも語らず
剣を握ったまま倒れた薊(アザミ)へ虫たちが哀悼を捧げる
白髪は二度目の花か風に舞い夢の揺り籠遠く旅立ち
雨籠に閉ざされ眠る鵯(ヒヨドリ)の餓(かつ)えた心誰が癒すか
朝顔の汁を絞った娘たち今は仮面の劇に溺れて
二人が時計を合わせることはなかったから恋は棺(かん)の中まで
筋道の見えぬものにも筋はある昔語りに消しゴムの跡
手招くか別れを告げるか芒の穂老人ホームの窓に向かって
母恋し父恋しと泣く大人たち亡くしてやっと子供に還る
身を澄ませばいくつも痛みがある夕暮れの蜜蜂の黄金よ
西日射す車の中で詠んだ歌帰り路すら分からないまま
《まねごと――喪失目録:2019年9月14日》
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