まねごと――喪失目録/ただのみきや
開(あ)き切った青の深みに呼ばれたか秋津は震えて空に溶けた
梯子を失くした煙が人のふりをして野山をうろついている
透けたくびれには永遠も一瞬もないただ砂の囁きだけ
鴉が落とした胡桃のせいで太陽が眼裏まで追って来た
もう嫌になったと鴉が自殺した解釈は真実を覆う
しじみ汁ねぎの青さを噛みしめてカチャリカチャリと箸で弄(まさぐ)り
斥候の命は必ず奪い取る赤も黒も蟻は残らず
釣り人を遠くに見やり目を細めるすっからかんの秋の空だ
車の後ろで着替える女がいる土曜のまだ涼しい頃に
着る服を迷う季節に海に来た白い
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