まわりくどい話/ただのみきや
の何かになりえたとか
あえて声に出して否定する必要はない
そんなことは分かり切ったことなのだ
わたしはわたしという牢獄の中で
自由気ままに他人になって
妄想の翼で飛び回る
ガラス壜の中の海原を進み
誰かの眼の中の宇宙で難破する
矢の如し光陰を捕まえて
いつまでも見つめている
ふりをする
泣くことも涙を流すこともない人は
悲しむことがないと言えるだろうか
喜怒哀楽はそこら中に落ちていて
共感は心地よい居場所だが
理解しがたい共振の痛みに震えながら
今は無人の孤島に残された鐘のように
朽ちて往く快楽に蔦を絡ませて
蝶を数える
くちもとから
蛙の足がはみ出している
こんな逸脱を繰り返し
遊戯に夢中の子どものように神隠しに逢えたらと
酒を飲む日曜日だ
《まわりくどい話:2019年9月8日》
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