まわりくどい話/ただのみきや
他の人生はない
次の人生もない
分かり切ったことだからあえて口にせず
「もしも」や「仮に」の世界を言葉にしたのだろうか
詩を書き始めた頃には多かった直喩から
あえて隠喩を多くしようと心掛けたように
いちいち断らずに
説明もせずに然も当たり前のこととして
書くことに躊躇はなかった
この目で見える世界すべて
事実を印象として捉え
記憶に自由を与え
照り返しと陰影に途切れがちな輪郭で
意味の繋がりは結果に委ね
時には物語の形を借りながら
俄かに想いに現れるもの
意識の水面下
自我の境界外
目を凝らし耳を澄ましたり
本や映画や音楽
歴史や宗教
日毎のニュースにまで
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