さよならは口にしないで/こたきひろし
 
た。
山際に家があって、自宅葬儀には全校生徒が召集された。その為にバスが何台かチャーターされた。事が事だけに参加を断る者はいなかったと思う。
県道から滝田君の家に繋がる道は狭くてその道を延々と男女の学生服が流れた。

滝田君は背が高く細身で色白の美少年だった。女生徒の間で好感度が高く、恋心を抱く女子は少なからずいた。
そのせいか、あちらこちらで嗚咽する女子の姿が見受けられた。
私。横川弘美もその内の一人だった。
滝田君は私が初めて好きになった男の子だった。
その想いを一度も告げられないままに滝田君は旅立ってしまったのだ。

切ない初恋の幕切れは突然やって来てしまった。
私が17歳になって間もない春に。
そして、その春に私はけして腐った蜜柑にはなってはいなかったと記憶している。
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