空が空の歌を歌っているのだろう……/la_feminite_nue(死に巫女)
椅子に坐っている。
その椅子は一脚の椅子で、
遠く空を眺められる。
それでもその椅子には二本しか足がなく、
片側にふれれば、わたしが揺れる、
片側にふれれば、世界が揺れる。
あの空の高まりとはつながりがなくても、
わたしは空を見つめている。
わたしすらが空に包まれるのではないかと。
不安定な椅子の上で、
わたしと世界がゆれる。
ぴったり、ひたひたと……
いつかわたしは椅子から立ち上がって、
恋したあなたのことも、世界のことも忘れ、
あの雲と一つとなるのだろう。
そして気相と混じりあったわたしが、
砂地にさされた一脚の椅子に、
かるい思いを乗せる、手紙として。
「わたしはもうここにはいないわ」
「あなたももうここにはいないわ」
「わたしはかつて、ここにいたわ」
崩れることのない一脚の椅子、
決して倒れないそれを、
見守るのは誰なのかしらね?
はるか頭上では名前も知らない鳥たちが、
しきりに呼び声をあげる。
「ここへおいで、ここでおいで」
空が空の歌を歌っているのだろう……。
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