レプリカ(四篇)/からふ
 

(Sample1.)

地図の中では
私、鳥になることが出来た
このどうしようもなく腫れぼったい目が
磨りガラスを通したように薄い朝焼けを映していて
二度と乗ることもない列車で恋をしてしまうように
美しい誤差をまた地図に刻み続けるのであった



(Sample2.)

死んだ祖父は
ひどく着色料の入った炭酸飲料を好んだ
あらゆるものの影が
限りなく透明に近いその色を失うとき
たくさんの色素が生みだされて
やがては忙殺されてゆく



(Sample3.)

こまやかな細胞は雨のように消費されていく
脱ぎ捨てた服の上で汗が蒸発するみたいに
セックスのことをエッチと言う人を
私は基本的に信用したりしない
イコールを鵜呑みにしないようにするのと同じだ
(唐突なスピードでイメージは加速していく)



(Sample4.)

比喩が暴走している
これだから夜は怖いと言うものだ
ゆっくりと街灯が朝に溶けていく
私が沈黙を咀嚼しているうちに
驚くべきしくみで
世界は昨日を終わらせたのだろう

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