詩四編「あるひとによせて」、「木」、「春」、「新鮮なあなた」/ビショプ
新鮮さ
ぼくは幼かった時、驟雨のあとで
庭の薔薇を揺することが好きだった
あなたはあの薔薇の木だ
まあ、あなた
来たのね
明るい声が言った
そして、ぼくはまだあの頃の少年なのだ
静かな水は風にさざ波を描きだし
あなたの蒼い姿は水につかって
豊饒のしぶきをぼくに浴びせかける
水辺であなたがぼくの凝視にとりかこまれる時
あなたは水よりも透明で緩やかに形を変えるようだ
あなたは前に屈むとその美しい黒髪が
ぼくの膝に水草のような縞を作りだす
ぼくとあなたのあいだに甘い音の時は移ろってゆき
愛の流れにぼくは驚き呆れている
待たせちゃったかしら
長い時だ、ぼくはこの歳になるまであなたを待った
ぼくとあなたは郊外の森に出かけた
晩夏の茂みに優しく光は揺れ
風は婚礼とともに流れている
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