神話の夏/ビショプ
 
香しい緑の叢を吹き靡かせてゆく北の風
空の結晶が草の上に漂う開け初めた晩冬の朝

年若き岸辺の揺らぎをたしなむ川は
白い霧のなかに煌めいている

かつて晴れやかな碧の森の風のなかで
わたしにも神話の夏があった

水から霞みが浮き出るように心が芽生える季節に
その頃わたしは両手を開いた子どもだったが
空が凛々しく川を上るほんのり紅らむ空気のなかで
純粋な想いはあなたの白い首すじに揺れていた

あなたの可憐な一矢がわたしの心をかすめていた
それは美しいというより戯れのような愛だったろうか

あなたの青灰色にまばたく眸
眩い胸に長く浪うつ黒い鳥のような捲毛
その美し
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