過酷な運命でもないが/こたきひろし
。だけど仕事に心有らずは見逃せないんだ。困るんだよ。大事な生活の糧だろ。しっかりやってくれよ。
と言ってから一呼吸間を開けてKさんは言った。
どうせまた失恋して惨めな思いするに決まってるだろう。
お前の器量じゃ女をどうこうなんて出来ない相談なんだからさ。それくらいはいい加減学習しろよ。
フーテンの寅さんじゃないんだからよ
それはKさんの理不尽とも取れる言動だったかもしれなかった。しかし俺はグッと耐えた。自分の思いを殺して。
俺はふたたび返す言葉が見つからなかったのだ。
情けない。
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