世にも不思議じゃない出来事/こたきひろし
 
当事
彼は三十代の半ばで独身だった。アパートで単独生活をしていて、恋人も同性の友達もいなかった。
職場まではバスで通勤していて、毎日が単調な日々の繰返しだった。
実家にほとんど帰る事がないのは、年中無休の飲食店で働いていて、盆休みも正月休みもなかったからだ。
そんな彼の休みは週に一度、土日以外の平日だった。
休日はほとんどが朝から部屋で寝ていて、昼頃コンビニまで歩いて弁当を買って空腹を満たし、夕方、近くのスーパーで生活用品を買ったりするくらいだ。
そんな休日の午前九時頃だった。部屋のドアがノックされた。あわてて寝床から起き上がり、服を着てドアを開けると、そこに立っていたのは隣の部屋の住
[次のページ]
戻る   Point(4)