スケート場にて/コタロー
冷たい光が差し込み、あたしたちの顔を薄霞が包んでいるかのようにおぼろげに見せていた。あた
しは周りを見回した。葵衣も琴葉、初香も起きていた。もしかすると眠れなかったのかもしれない。
街には行ったことことのないあたしたちには、それは新しい世界への扉をひらくことだった。
あたしたちは、幸恵さんと車に乗って街に向かった。森から街に通じる道は白銀の世界だった。木
の梢から雪が落ちた。それは雪の静寂をあたしに感じさせた。しばらくすると雪が降り始めた。あた
しはその雪を子ども時代の幸せな年月の最後の風景として思い出す。この先に待っているであろう悲
しい出来事が雪の無垢と純粋さによって浄
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