スケート場にて/コタロー
 
おさえようとした。

 スケート場を出る時に幸恵さんがあたしたちの前に腰をおろして言った。「わたしは、あなたたち
が幸せになることを約束するわ、わたしを信じてね」あたしたちは彼女の言葉にうなずいた。

 帰りの車の中で、あたしたちは、ずっと黙りこんでいた。街を出る時に時計台が見え、その大きな
黒い時計の針は確実に時間を進めていた。雪は止み、車の窓から見える風景は寂しい静寂をあたしに
感じさせた。幸恵さんの顔は少し蒼白く厳しい表情を浮かべているように見え、あたしは彼女の表情
の変化が何を意味しているのか思いあぐね、意識は幸福の余韻とすぐ先に迎えるその日への恐れとの
あいだで揺れ動いていた。
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