自分が産まれたのって、いつだっけ?/こたきひろし
 
その産声も周囲の空気を震わせて
その場に居合わせた何人かの鼓膜に音を伝えたに違いなかった

その時の周囲の人間の喜びと安堵がどれ程のものであったかと想像しても、すべては遥か昔話だ

本日、選ばれたこの佳き日に
私は私の命の糸に鋏を入れられる
もうすぐだ
思い残す事をあげたら、
数限りある
それをここで
いまわのきわで
申し述べる余力はありません

もう
自分の誕生日さえ
思い出せないしだいです
意識がだんだんに薄れて、とても眠りたい気分です

せめて最期は
雄叫びでもあげられたら
見送ってくださる皆様の
鼓膜を振動させてあげられるのですが
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