可哀想な人たち/こたきひろし
 
知り合いに実に可哀想な男がいた。

俺と同様に洋食のコックだった。東京の下町のレストランで見習いから始めて、そこに十年近く働いた。
なんとか一人前の職人になった頃、父親に呼ばれ郷里の町で父親の資金力で店を出してもらった。
開店当初は両親だけで手伝い、その内に父親が若い女を連れてきた。何でも父親はレストランを出す前までは、スーパーマーケットで働いていて、連れてきた若い女もそこで一緒に働いていたらしい。
父親が気にいって何かと面倒や相談に乗っていたとか。若い女も父親になついてくれたとか。それで父親は長男の嫁にと目論んで口説きレストランを手伝わせた。
知り合いは大人しくて真面目一方の男だった
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