まねごと――夏から秋/ただのみきや
兄笑い弟泣いた花火は海へ闇へ消え何も残らず
カブト虫カバンに隠し学校へ死んだ弟靴音軽く
廃屋の塀からおいでおいでする夏草に咲いた少女の指
死んでやる孫に向かって言う母をさっといさめて箸は休めず
爛れ往く記憶の畦に舞い降りたゲイラカイトは誰の便りか
小糠雨天神祭りの吊り電球朝に黄ばんで眠くなり
ギターを弾き語る拙さに声もかけたくなる二缶目のビール
梢高く鳴る風の行方を知る蝉も蜻蛉も追って追われて
幼き恋に殉じよと目交に燃ゆる彼岸花意識飛ぶまで
やるせないと書いて続かない燐寸を擦(こす)れば文字だけ青い火
《まねごと――夏から秋:2019年8月24日》
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