タチアオイの妖精/丘白月
 


雨が止んで
月の光が庭に落ちる
照らされるのは妖精の羽根
背の高いタチアオイが二人
寄り添って踊り始める
赤い絵の具が流れるように

フレデリックが
月明かりでピアノを弾く
妖精に聴かせるように
星をならべ詩をうたい
夢見るように夜空に溶ける

夏の夜に妖精が愛した人
フレデリック・フランソワ・ショパン
カーテンに影を映して言葉を交わし
眠れぬ夜にノクターンを
恋する夜にはワルツが
静かな夜に虫の音と編まれる


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