坂だらけの街/ただのみきや
時の流れが逆なでにならない姿勢と仕草
しなやかさを保ちながら
向かいの建物の陰から 素早い身のこなしだが
まだ 線の細い そっくりな二匹が
寝ている猫に ちょっかいを出したか 甘えたか
三匹の猫は路上の気流を少し掻き乱す
すずめたちのお喋りは離れた場所で続いている
それでも不快な所まで車や人が近づけば
止まっている近所の車の下に三匹とも潜り込む
珍しくもない風景に見入っている だが
懐かしさを感じるのは既に珍しい風景だから
ペットか野良かの区別もなくただ見つければ
舌打ち鳴らして呼び寄せ撫でようとした
子供の頃を遠く 眺めていたが
――船の汽笛の響き
すっかり見失ってしまった 少年と猫
《坂だらけの街:2019年8月18日》
戻る 編 削 Point(7)