カルーゼル凱旋門の妖精/丘白月
 
パリの妖精
第5話「カルーゼル凱旋門の妖精」




街路樹は白い息と雪を
編みたての帽子と
マフラーのように巻く

底冷えの朝は空気も凍り
夜明けを告げる鐘の音は
氷を割るように降る

凱旋門の上で眠っていた
月も金星も妖精に内緒で
そっと帰っていく

白い道はテュイルリー宮殿へ
足音もなく足跡が付いていく
妖精が案内するのは魂たち

雪が積もると思い出す
凱旋門で彫刻を掘る音
妖精の羽も刻まれた日を




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