夜明けがくる前に/こたきひろし
だ
そして
あたしは成長し
ある夜に
をんなになったんだ
もしこの世界に
異性が存在しなかったら
あたしはずっとずっと
美しい少女の
ままでいられたかもしれないのに
それは
あたしの
とうさんが
あたしのかあさんに
初めてしたように
とても綺麗な儀式だった
そうやって
あたしも
好きな人と
いったいになれたんだ
だけど
それはあたしの錯覚
その錯覚に
酔いつぶれて
何も見えなくなっただけ
いつだって
あたしは
夜が明ける前に
目を覚ましてしまうのが
癖のように繰り返されてしまった
切ない習慣のように繰り返して
しまった
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