夜明けがくる前に/こたきひろし
 
あたしが
まだ赤ちゃんだった頃
産んでくれたかあさんの乳房は
あたたかい海のようだった

あたしが
まだ赤ちゃんだった頃
とうさんは
ただの一人の男の人だった

あたしがまだ赤ちゃんだった頃
オムツを濡らすオシッコや
オムツを汚すウンチは
夕映えの空のようだった

そんな中で
あたしは
すくすくと育った
訳じゃない
バランスの捻れた
心とからだは
愛情に飢えて
いたと思う

あたしには
反抗期なんて
なかったと思う
いつの間にか
反抗する相手を見失っていたから
ただただこの世界に従順なだけの
めっちゃ
可愛げのない女子になっていたんだ
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